2018年2月9日号 Vol.319


カーネギーで自主公演
決意で取得したO-1ビザ
ダンサー:大橋 武司


Photo by Pratya Jankong


先駆者たちの声(Voice)を聞き、ヴィジョン(Vision)を描き、活力(Vitality)を発揮して、ヴィクトリー(Victory)を掴もう! アメリカでチャレンジするための必読バイブル「ザ・V・ファイル」!


仮面ライダーとショッカーの対決シーンに魅せられた少年が、日本を飛び出しアメリカという大きな舞台に立った。夢は見るものではなく掴むもの。ダンサー大橋武司(おおはし・たけし)が、O1ビザの取得に使った道具は、なんと一台のスマホ、そして、固い決心だった。

愛知県武豊町に生まれた大橋は、姉、兄、妹、弟に挟まれて育った。田舎だったこともあり、普段は裏山を走り回って自然に触れ、家に帰るとゲームで遊ぶという、とにかく活発な幼少時代を過ごした。「アクション」への入り口となったのは、テレビで見た仮面ライダー。軽々とバック転するスタントシーンを見て、体を動かすことに興味を持ち始める。小学校4年の時、シドニーオリンピックの体操選手たちを見て、さらに肉体の美とその可能性に魅せられる。中学に入ると体操部に入り、12歳で本格的に新体操を始め、高校では得意の体操で個人や団体で県大会優勝、全国大会、国体出場と、どんどん体操の世界へ引き込まれていった。
高校卒業後、モード学園でファッションの勉強を始めたことがきっかけで、アメリカを意識し始める。その頃、某ダンスカンパニーに誘われ、ジャズダンスを始めた。19歳の時という、ダンサーとしては遅いスタート。しかし、体操で鍛えた体はダンスの世界でも十分力を発揮し、半年もしないうちにミュージカルの仕事が入った。
「このカンパニーで5、6年やれば、ダンスで生計を立てられ、アメリカにも行けるという話を聞いて、これはおいしい話だと思いました」と浮き足立った大橋。ところが、初めての海外公演となるルーマニアへの遠征で、その夢は見事に砕かれた。蓋を開けてみれば支払った費用は自腹で30万円、もらえたギャラは僅か3千円。これでは駄目だと、直ぐに退団した。
そんなある日、ニューヨーク在住で同郷の先輩ダンサーが地元名古屋で開講したワークショップに参加する。それまでの持っていたイメージを覆すコンテンポラリー・ダンスの真の面白さに直面した大橋。丁度その頃、ニューヨークでシルク・ドゥ・ソレイユのオーディションがあると言う情報を入手し、英語もまともに話せないのに、1週間後にはマンハッタンの街を歩いていた。
オーディションには参加できなかったものの、その時の1週間の滞在で幾つかのダンスレッスンを受け、「これなら自分でもやれる!」という自信を持ち、アメリカでO1ビザを取得しようと即決。一旦、帰国して生活資金を貯め、すぐにニューヨークを再訪した。
「ビザ取得」という目的がはっきりしていたため、語学学校が始まるや否や、直ちに移民弁護士に相談。ダンス・オーディションを繰り返す中、スポンサーをわずか3ヵ月で見つけ、申請に必要な推薦状を地道に集めていく。言葉が通じる日本人からの推薦状を集めるのが意外と大変で、詐欺と疑われたりもしたと言う。
語学学校で英語を学びながらダンス活動を続け、機が熟した1年半後、無事O1ビザを申請。3ヵ月後に追加資料の提出を求められるが、さらに推薦状と活動のクレジットを増やして提出、2016年に無事O1ビザを取得した。ちなみに、彼を担当した弁護士の話では、F1(学生)ビザからO1ビザを申請すると、だいたいの場合において追加資料を求められることが多いそうだ。

彼の取得プロセスの中でユニークな点は、自身がパソコンを持っていないため、友達に頼んで書類を作成してもらったことだろう。その為、定規を使ったりして、手書きで書類作成の準備もしたと言う。本人は死に物狂いだったらしいが、「持つべきものはテクノロジーよりも友。その気になれば携帯一つでもビザは取れる」と笑う。
逆に一番困ったことは、病気で父が他界したにも関わらず、ビザ申請中だったために、アメリカを出国できなかったこと。精神的な強さも求められるビザ申請、一生に一度、大切な家族との別れに立ち会えないことも起こりうるということだ。

ビザ取得後に成し遂げた大橋の輝かしい功績は、昨年7月、伝統あるカーネギーホールで自主公演を行ったことだろう。日本からの共演者たちの協力を得て、クラウドファンディングで75万7000円を集め、2つのダンス作品と音楽コンサートをあわせた3つのプログラムからなる「HANABI〜はなび」公演を実現。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」を実証した大橋武司。自らが開発したメソッド「タイソーテクニック」(注1)を広めながら、「今後はパフォーマー兼プロデューサーとして活動していきたい」と目を輝かせた。

決意と野望を持ってすれば、道は必ず開かれる。開拓精神がサクセスストーリーを生み出すアメリカ。海を越えれば、米国大陸は目の前に広がっている!
(河野洋・マークリエーション)

※掲載原稿はあくまでも本人の話に基づいて書かれており、合法性や詳細などについては、移民弁護士のアドバイスを仰ぐことをお勧めします。(編集部)

(注1)タイソーテクニックとは体操競技、バレエ、NYダウンタウンモダンダンスやストリートダンス(特にアイソレーション、ブレイクダンスのフロアスキル)などの技術を元に作られた舞踊表現技術。効率的に身体を使うために、骨と関節の強さと内側の筋肉を使うことに焦点を当て、身体の反動や捻りなどを利用しそこから踊ることへと繋げていく。濡れたタオルのような重みのある動きと硬く重力に逆らうような体の使い方が特徴で、この技術を通して自身のセンターとミリ単位でのコントロールを手に入れていくことを目標とする。

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