2018年2月9日号 Vol.319

オープン以来ほぼ満席!
はかなく美しいラブストーリー
「ワンス・オン・ディス・アイランド」


(l to r) Mia Williamson, Alex Newell, Hailey Kilgore and the cast of Once On This Island


Michael Arden. All photos © Joan Marcus, 2017


劇場に入ると、広がっているのは本物の砂が敷きつめられたビーチ。そこで繰り広げられるミュージカルは、身分違いのラブストーリーです。
発想の基となったのは、「人魚姫」と「ロミオとジュリエット」。この2つの悲恋の名作をもとに、ローザ・ガイが小説「マイ、ラブ!マイ、ラブ!―ある貧しい少女の恋物語」を執筆。このストーリーにミュージカル「アナスタシア」のリン・アーレンズ&スティーブン・フラハーティコンビが詞と曲をつけ、ミュージカル化。90年にオフからあがってきた作品の2度目のリバイバルとして、上演されている作品です。
2017年11月のオープンから3ヵ月も経つのに、ほぼ100%近い入りをキープし続けている要因は、馬蹄形の小ぢんまりとした劇場で、目の前でブロードウェイを代表するスターの熱唱を見られるから。
ほぼアフリカ系の出演者たちで演じられるこのミュージカル。主人公の少女ティ・モーンを熱演しているのは、オレゴン育ちのキュートなヘイリー・キルゴア。ついこの間まで田舎町の合唱団員だった彼女の運命を変えたのは、ポートランドで行われたタレント・コンテスト。2位に輝き、ニューヨークへ。オーディションで今回の主役をゲットした実力派です。
そして脇を固めているメンバーがすごい。「ポーギー&ベス」のノーム・ルイスに、「ミスサイゴン」のオリジナル・キム役のレア・サロンガ。この2人が同じ舞台に立つというだけで、ブロードウェイ・ファンは鼻血ものです。そこに「アメリカン・アイドル」のタミラ・グレイと「グリー」のアレックス・ニューウェルらが加わっているのです。
この豪華メンバーたちが、パーカッションが鳴り響く、明るいリズムのカリビアン・ミュージックに乗って、エキサイティングなストーリーを繰り広げるのです。

舞台は、カリブ海に浮かぶフランス領アンティル諸島のとある小島。この島では、神々に祈りを捧げながら日々働く農民たちのペザントと、優雅にパーティを楽しむ富裕層グランデが暮らしています。島を守護しているのは、大地、水、愛、死を司る4人の神々。八百万の神がおなじみの日本人には、親しみやすいストーリーでしょう。
作品の大きな特徴は、ストーリーテラーがほぼ出ずっぱりで登場すること。彼らはときに貴族になり、民衆になり、雨や鳥にもなって、登場人物の心情を代弁しながら、歌い踊るのです。
物語は、「いま」から始まります。ある嵐の夜、おびえる子供に、農民のペザントたちは、グランデの青年に恋をした娘ティ・モーンの話を語り始めます。
ある日、この島を大洪水が襲ったときのこと。水の神・アグウェと愛の神・アサカの気まぐれで生かされたのがティ・モーンでした。
大地の神・エルズリーの助力もあり、大きな木の上で泣いていた女の子を見つけたトントンとユーラリーは、引き取って育てることに。2人の深い愛情を注がれ、美しく成長したティ・モーン。しかし、彼女は刺激のない島の生活に辟易しているのです。
そこに起きた事故。ティ・モーンはケガをした青年ダニエルを助け出します。彼の命を救えば、この退屈な世界から抜け出せる…。幸せになれると思い込み、必死に看病をするティモーン。やがて2人は恋に落ちますが、ダニエルは農民たちと敵対するグランデ・ボゾーム家の息子だったのです。
引き裂かれる2人。しかし、ティ・モーンはダニエルを求め、グランデの地に旅立ちます――。
神々に見守られながらたどり着いた見知らぬ土地。しかし、ダニエルには婚約者がいた。悲しみに打ちひしがれたティ・モーンの運命は…。

タミラ・グレイ演じる死の神・パパゲーの歌うフレーズが耳に残ります。
愛にまっすぐ生きたティ・モーンの、はかなく美しい物語。舞台の原点の面白さが存分に詰まった作品です。
(佐藤博之)

Once On This Island
■会場:Circle in the Square Theatre
 235 W. 50th St.
■$89.50〜
■上演1時間30 分
www.onceonthisisland.com


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